学習塾の講師の採用面接にて「良い先生とは、どんな先生か?」を訊ねられるかと思われますが、同様に「良い教室とは、どんな教室か?」も合わせて考えてみることが、その教室が健全に運営されているか否かがわかるものです。
ちなみに、私が思う前者への一つの答えは「一方通行にならず、生徒と対話ができる先生」です。
では、後者への答えは、いかがでしょうか?
【良い教室=何でも生徒や保護者の要求を叶える教室】だと思ってしまっている運営会社や教室がありますが、これは非常に危険な勘違いと言えます。
「生徒や保護者たちにいい顔をしていたい」という体裁だけを重視した結果、学習塾として破綻することになってしまいます。
まずは、二つの実話から、いかにこの考え方が危険な勘違いかを見てまいりたいと思います。
◆【無料体験】の位置づけ
恐ろしい話ですが、こんなことがありました。
当時は一人の講師につき生徒が3人までという【1:3個別指導】に勤めていた私でしたが、「今日のこのコマは○○さんと△△さんか。じゃあ、前回の流れから、次回に流れを持っていくために、今日はこれをしてあれをしよう」と、既に準備万端で授業開始に臨んでいました。
ところが、開始5分前のことでした。
突然、教室長から「この授業で社会科の体験授業をしてください」と言われました。
それだけで、( ゚д゚)←こんな顔になるのも無理ありません。
私のみならず、周りのスタッフも( ゚д゚)←という顔になっていました。
しかし、断るわけにもいかず、「その生徒の学年と名前は?やるのは地理ですか?歴史ですか?どの範囲をやるのですか?」と最低限の情報を確認したところ…
「□□くん(下の名前しかわからない)です。中2の歴史をやりたいそうです。どこでもいいそうです」
…授業開始5分前で、最低限の情報すらわからない。
どうやら、通っている生徒が連れてきた友達らしい…くらいしか情報がない。
でも、「やってください」。
……仕方ないので、やりました。
当然、準備をしていた生徒たちの予定は大幅に狂ってしまいました。
曰く、「私は、いつでも授業を受けたいと思って来てくれる子のために受け入れる間口を作ってあげたいんですよ」
…………実際に授業をするのは誰でしょうか?
言うなれば、入念に準備を進めてきた演奏や合唱の場で「すみませーん、ちょっと歌いたがってる人がいるので、混ぜてあげてくださーい。あ、この人が歌える曲でお願いしまーす」と乱入させる現場監督のようなものです。
いくら無料体験授業を実施しているからといっても、以下の手順を踏まないと実施に至ることはできないものです。
・保護者の方の確認を取る
・現在の学習状況についての確認もヒアリングをする
・その日の授業の空き具合や授業を受ける生徒たちの顔ぶれを考慮する
これらを経て初めて無料体験授業のセッティング完了となります。
ところが、このときは、すべてがスルーされてしまいました。
そのため、結果として、既に授業準備を済ませて開始を待機している状態の枠に捩じ込んで、他の生徒の授業をぶち壊しにすることになってしまったのです。
【その日、担当すべき講師が急に来られなくなったので、急遽可能な講師に代講を依頼して、授業に穴を空ける事態を回避する】というケースとはまるで異なります。
これは、果たして健全な学習塾としてのあり方と言えるのでしょうか?
申し上げるまでもありませんが、明らかに教室長のルール違反です。
ちなみに、その無料体験授業を実施したお子さんのご家庭からは、その後一切の連絡もありませんでした。
◆【振替授業】の対象
もう一つの恐ろしいお話を。
生徒自身やご家庭のご都合で、予定通りの授業をお休みする場合、どのようなケースであっても振替対象になるのか?と申しますと、当てはまらないケースも発生します。
これは、運営会社や教室によって様々ですが、多くは【当日欠席の場合は、授業開始前○時間前までのご連絡】かと思われます。
振替ルールを明確にしておくことで、教室と生徒・保護者様との相互関係に秩序が保たれます。
ところが、「急なお休みでも、ご連絡さえいただければ、月に何回授業を休んだとしても振替します」という理念のもとに対応していた教室がありました。
確かに「よかったぁ、授業料が無駄にならずに済んだ!」と利用者目線でのメリットはあるかもしれませんが、実は双方共にデメリットしか存在しません。
では、どのような事態が発生してしまうのでしょうか?
1)振替がたまる一方で教室も生徒側も圧迫される
例えば、生徒の中には、スポーツのクラブチームに所属していることから、授業を受けに来られる日や時間帯が限られている場合が多いものです。
仮に、このような生徒が「連絡さえしたので振替OK」というシステムのもと、振替対象の授業を作ると、消化しきれません。
実際に、消化しきれない授業の振替がスケジュール的に困難となりますと、「支払われた授業料を手数料としてキャンセル扱いにすべきでは?」という問題も発生します。
また、学年が変わることに伴い授業料も変わりますが、全学年の授業料での振替が消化しきれないとなりますと、「これはいつの学年の授業だ?」と管理が複雑になってしまいます。
「既に授業料を払っているから、問題ないじゃないか?」と思われるかもしれませんが、【その月に実施された授業回数と授業料の合算が合わない】という売上管理報告上の食い違いが発生します。
「連絡さえくれれば授業は休んでも振替になります」というシステムは、教室も生徒側も圧迫されるものです。
2)双方共に無責任関係を生み出す
酷い表現になりますが、このシステムは教室と生徒側双方共に無責任さを増長するものになってしまいます。
ルールが明確化されていないのですから、生徒側としてはドタキャンし放題になってしまいます。
そうすると、せっかく準備された授業は、そして担当する講師は、大幅にその後の流れを変えなくてはならなくなったり、予定のカリキュラムの進捗も遅れをとることになります。
そして、一見、ドタキャンする生徒側に否があるように見えるこの事態も、元を正せば運営会社や教室側が生み出したシステムによる【当然のこと】になります。
つまりは、運営会社や教室側の無責任さが生徒側の無責任さを生み出していることにつながるのです。
余談ですが、あまりにルーズなシステムを改善したところ、ごく一部ではありますが、保護者様の中には退会をした方々がいらっしゃいました。
常習的にドタキャンしていた方々には、実に【都合のよろしくない相手】になってしまったということです。
しかし、社会における信頼関係を考えれば、それまでがあり得なさすぎただけ…と言えます。
◆【良い教室】は明確化されたルールのもとに築かれる信頼関係のもとに成り立つ
このように、利益ばかり追及して生徒や保護者様の顔色をうかがって【外面だけ】の教室でいることは、運営会社や教室にとっても、利用者にとっても本当の意味での【良い教室】にはなれないものです。
これは、日常における対人関係や社会関係にも十分当てはまります。
【外面】ばかり気にして、【内面】を大切にしていない場合は、いくら誰かが歩み寄ろうとしてくれても、結局心が込められていないことと同じと言えます。
不健全な教室運営や、利用者の無法地帯化…それらは運営会社や教室としての質そのものを落としかねません。
当たり前のことではありますが、生徒たちの未来を導くお手伝いをする学習塾という場所が、生徒たちのお手本になるような、まさに【背中を見て育てる】ことができるようなシステムやルールが整う場所であってほしいと願わずにはいられません。
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