皆さんは【反省】という言葉について、どのような印象をお持ちでしょうか?
また、【現状維持】という状態について、どのような印象をお持ちでしょうか?
【反省】は「自らを顧みる」という本来は前向きな意味もある言葉ですが、幼少期からの「反省しなさい!」と叱られた経験からネガティブなイメージを持つ方も少なくありません。
また、私も同イメージが根強く意識に存在しております。
そして、【現状維持】は一種の成功体験である、と私は考えております。
なぜならば、成績が下がるのは誰にでもできることですが、現状維持にもそれなりの継続した習慣が必要になるからですし、その状態からつかんだコツや理解が成績向上につながります。
今回は、とある【ブラック企業】にて実施されていた習慣が、恐ろしいことにスタッフの【成功体験】を根こそぎ破壊してしまったと……いう例を挙げながら、【反省】と【現状維持】、そこから前へ進むためのポイントについてお話させていただきます。

◆「反省」というワードがもたらすイメージ
残念ながら【ブラック企業】と称される企業は、世の中にいくつも存在するものです。
これは、私が紆余曲折の社会人生活の中で垣間見た、ほんのひとコマです。
その企業はスタッフの入れ代わりが激しく、常に誰かが辞めては新しい人が入社する……という状態が続いていました。
そこでは、いつも業務の終わりに日報を書くことになっていました。
これについては、いろいろな企業さんで実施されていると思いますし、学習塾でも【授業報告書】という形で各授業ごとに保護者向けに書いております。
問題となる場面は、その日報の中にあった【その日に反省すべきこと】なる項目になります。
【その日にできたこと】以外にも「反省すべきところがない人なんているはずがない」という理由から設置されていた項目ですが、皆さんはこれについて何を書くべきか、どのように想像されますでしょうか?
これには、「反省」というワードをどのように捉えるか?によって様々な感想が出てくると思いますが、やはり「反省=よくないところ、改善すべきところを振り返って探す」というネガティブなイメージがつきまといます。
つまり、「反省すべきところがない人なんているはずがない」という企業の前提は【無理やりなネガティブ探し】に直結してしまっているということを否定できないように感じられます。
「そんなことはない。ポジティブとネガティブの両面を受け入れてこその成長だ」という意図なのかもしれませんし、それは確かにそうであると言えます。
しかし、こんなケースのスタッフがいたとしたら、どうでしょうか?
いつも繰り返すミスを防ぐためにいろいろな工夫と努力をしているAさん。
先輩からのアドバイスも真剣に耳を傾けています。
そんなAさんが、今日の業務で、ようやく一歩前進してクリアできたことがありました。
それはAさん自身にとっても「やっとできた!」という達成感であり、立派な成功体験になります。
ところが、その日の業務日報の時間になり、今日できたことを自信を持って書いたものの、【反省すべきところ】でAさんは何を書けばいいのかわからずに固まってしまいました。
それでも、「反省すべきところがない人なんているはずがない」という上司の方針に従わざるを得ません。
そのため、Aさんは無理やり【反省すべきところ】に「今回はできたけれど、次もできるとは限らない。私はまだまだなので、気を引き締めて頑張ります」と書くしかなかったのです。
それから数日後、Aさんは退職しました。
せっかくの成功体験で、小さくても大きな一歩になったはずのAさんにとって【反省すべきこと】は無理やりなネガティブ探しとなり、「自分はやっぱり駄目なんだ。自分は反省すべき人間」というすり込みを行うことになってしまいました。
それが恐れと過剰な意識となり、同じミスを繰り返す要因になってしまい、仕事を続けてゆける自信を失ってしまったのですよね。
「そんなのは気の持ちようだ」という声も挙がるかと思いますが、このように過度な【反省】は、一歩間違えればただの精神論、根性論レベルでしかなく、成長させたいのか後退させたいのかわからない結果を招くことになってしまいかねません。
これでは、苦手だった計算が全問正解できた子に「今回の反省点はどんなこと?」と無理やり反省させて成功体験の喜びとモチベーションに水を差すのと同じことになります。
「今回の成功を継続させてゆこう」という【現状維持】すら許されない風潮は、Aさんのみならず必要以上の自己評価の低下を何人ものスタッフにもたらしてしまったかもしれないのです。
◆現状維持でも相当な努力がいる
これが家庭や学習現場になると、どうでしょう?
以前、こんなタイプの生徒がいました。
しかも、よく見るタイプです。
Bくんは勉強が苦手な中学1年生です。
どれも定期テストは平均点に届くか届かないかくらいの成績でした。
そんなBくんが、学年末テストを迎えるにあたって学習した英語の単元がわかりやすかったようで、Bくんは初めて英語で平均点をとることができました。
しかし、塾に来たBくんは、浮かない表情をしていました。
「いくら英語が平均越えていても、他がダメだから……。親もそう言っていたし」
Bくんはそう言いました。
他の科目の点数も、よく見ると平均点との差異が前回と変わらないものや、むしろ前回よりも少し平均点に近づいたものもありました。
BくんはBくんなりに、どの科目も努力していたのです。

Bくんの保護者の方は、Bくんの初めての英語平均点超えという快挙よりも、その他のネガティブなポイントにフォーカスしてしまったために、Bくんの自信を失わせてしまうことになりました。
勿論、保護者の方はBくんに「もっと頑張れるでしょ!」という励ましを送りたかったことは間違いないでしょう。
しかし、ここで気を付けたいのは、一見ネガティブなポイントであっても【見た目の数値には反映されない努力の形跡】が存在する可能性を見落とさないようにすることと言えます。
定期テストや実力テストは、点数よりも「平均点との差異」が大切になり、これが【偏差値】に換算されています。
それを考えても、Bくんの英語の努力は見事に反映されたと言えますし、残念ながら平均点に届かなかった科目も、Bくんにとっては「前回よりも下がらないように努力した」ということの反映になります。
トータルで考えると、Bくんは英語は【前回よりも上昇】、その他は【現状維持】と言えます。
「0点は誰でも取れる点数」というように、どんなに成績が良い子どもであっても、答案用紙に何も書かなければ0点を取ることはできます。
そして、どんなに前回の成績が良くても、サボってしまえば成績を下げるのは簡単です。
そうでない場合、自分が目標とする点数や偏差値がいかに努力が必要になるか。
【現状維持】でも、本人にとっては相当な努力をしていることになります。
これは、ダイエットや体型維持を意識される方であれば、そこに置きかえるとわかりやすい例だと言えます。
◆過度な【反省】よりも【次回への目標】、【現状維持】への恐れよりも【現状維持+α】が建設的
よく、保護者面談のために作成する資料に「現状の学習状況と課題点」という項目を添付しておりますが、私を含め、多くのスタッフは、目立って現状の課題がない子には「現状維持しつつ、他の科目もバランスよく取り組んでもらえれば」と書いております。
無理に課題点を挙げることは揚げ足取りにしかならず、それならば【現状維持+α(プラスアルファ)】を提示してもらう方が、実際にご覧になる保護者や生徒も良い気分でいられるものと思うのですよね。

勿論、現状維持だけでは自分に制限を設けてしまう可能性につながりますし、目指す未来に手が届くはずがないのであれば「次のステップとして、そこから何をするべきか?」という建設的な方針を打ち出す必要があります。
先日のブラック企業案件で言うならば、敢えて「反省すべきところがない人なんているはずがない」とばかりに【コンプレックスを克服する美徳】を押し付けるようなことをさせてしまうよりも、【次回への目標】にしたほうが、今回できたことへの達成感と自信、そして圧倒的に未来へのモチベーションアップにつながると言えます。
「今回は、これができた。次は、これができるように工夫してみよう」
「今回の結果は、これだけ頑張れたから。次は、他のものも、同じようにわかるところやできることがないか探してみよう」
そんなふうに、小さな一歩の積み重ねが習慣となり、大きな道のりにつながってゆくものです。
そうすれば、たとえ精神論・根性論に見える「気の持ちようでどうにかできるはずだ」という考え方も、一人一人に合った、充実したステップアップに変化するでしょう。

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